松本零士先生を偲ぶー我が青春のアルカディア

2024年1月8日

また巨匠がお一人去られる

 日本のSF漫画の巨匠、松本零士先生が亡くなられました。ご冥福をお祈りいたします。

作品を一つ上げろと言われれば

松本零士先生の作品といえば、銀河鉄道999だと思います。もちろん自分も好きです。年齢的にもどりんたろう監督の映画版が真ん中です。
TV版も見ていましたが、テイストとしては映画版の方が好きです。いわゆるイケてる哲郎の方ですね。

で、この作品の中で凄まじいインパクトを放ったのがキャプテン・ハーロックとアルカディア号です。
キャプテン・ハーロック自体は児童館の図書館の漫画やらで知ってはいたものの、アルカディア号とセットでインプットされたのはこの銀河鉄道999からなのです。
そうこのマッコウクジラ型と呼ばれるアルカディア号。最近はこっちの方がお馴染みかもしれませんね。

このモスグリーンのマッコウクジラ型は銀河鉄道999からのデザインで原作コミックスやそのアニメ版だと以下の方で999を見る以前のアルカディア号は自分もこのイメージでした。
いわゆる衝角型というタイプです。
このタイプは銀河鉄道999の映画版以降の作品ではアルカディア型1番艦やハーロックの軍人時代の乗艦と作品によりまちまちですがデスシャドウ号という形で設定が残っます。
これ映画版の999ではちょっとデザインが違うけど惑星ヘビーメルダーのトチローの墓の近くにブッ刺さっています。

この映画版999でキャプテン・ハーロックとアルカディア号がとにかくかっこいいんです。
最終決戦前のセリフ
「男なら 危険を顧みず、死ぬと分っていても行動しなければならない時がある…負けると分っていても戦わなければならない時がある…」
いやーかっこいいです、最近の覚醒系や異世界系作品などではトントお目にかかれぬセリフです。
このあと哲郎を助けに、999号を援護するため敵軍のど真ん中に船首の髑髏がどアップでズゴーンと突っ込んで敵をガシガシ吹っ飛ばしながら突撃するわけですがそのシーンがマジでもうねインパクトが半端ないんですよ。
上のマッコウクジラ型アルカディア号を見てください、宇宙戦艦ヤマトと同様の松本式地球型宇宙戦艦の艦橋! 「見ろ、これが大艦巨砲主義だ!」主張するかのような甲板の三連装ショックカノン! 巨大で装甲分厚いですと言わんばかりの勇姿!
これで機械化人間の戦闘機や戦艦、要塞の砲台の間をオラオラ突き進んでいくんです、そして艦橋の天井の上で操舵輪を操るキャプテン・ハーロック!
・・・
・・・・
・・・・・・
・・・何故かこのごっつい宇宙戦艦の艦橋の中じゃなくて天井の上でパイレーツ・オブ・カリビアンよろしくキャプテン・ハーロックが操舵輪で艦を操るのです。生身でな!
で、敵機の流れ弾の爆発で飛んできた破片が頬を掠めて垂れた血を拭って「ニヤリ」と笑うんですよ。何を言ってるかわからないという人はとにかに見てくださいとしか言いようがない。
なぜにこのブリッジ付きの宇宙戦艦なのに艦橋の外に操舵ユニットついてるんすかと作成者(大山トチロー)に問えばただ一言「かっこいいから」と言うに違いない。
そうロマン溢れるシュチュに理屈抜きのカッコよさにおっさんはやられました。
あとで知ったのですがTV版キャプテン・ハーロックの監督でもあったりんたろう氏が最終回後、「ハーロックのこの後はどうなるんでしょう」と言う質問に対する答え。
「どこかで野垂れ死にだろう」
江頭2:50の「俺の夢は野垂れ死に!」前に存在した、全てをやり切った、男として最高の死に様的な意味の「野垂れ死に」というパワーワードである。
もうここで自分にとって、ベスト松本キャラはキャプテン・ハーロックになったのです。
そして、そんなハーロック推しの自分があげるのはこの作品に決まっているのである。
1982年公開「わが青春のアルカディア」

銀河鉄道999の次を狙ったが興行収入はイマイチだったということは重々承知の上である。
だが我がマイベストはこの一作、2014年のCGアニメ版でもなくこのわが青春のアルカディアなのである。

我が青春のアルカディア それはハーロックが何故に髑髏の旗の元に宇宙海賊となったかの物語

漫画版やら銀河鉄道 999やらを踏まえても本作は整合性とか合わないのですが、松本作品に関してそれを言っては元も子もないないわけなのでここは一つ、「いんだよ細けぇことは」とお得意の昭和のテイストを感じて見ていただきたい。
松本零士作品にはハーロックの祖先のことが語れる作品がザ・コクピットと言う作品にいくつかあり「スタンレーの魔女」と飛行機冒険家のファントム・F・ハーロック一世のエピソードと題名がそのものずばり「我が青春のアルカディア」という第二次大戦終戦末期のドイツ軍の戦闘機パイロット、ファントム・F・ハーロック二世の二つのエピソードが映画内にブッ込まれているまさにハーロックのルーツを突き詰めた話なのです。

スタンレーの魔女は1巻、我が青春のアルカディアは4巻ですな

映画の冒頭で「スタンレーの魔女」のエピソードが戦争に敗れた地球軍の将として先祖の本を見る若きハーロックという流れで語られるんですが、ハーロック一世の声を石原裕次郎が当てており当時結構話題になっておりその高額なギャラは物議を醸したんですが、実際めちゃくちゃ渋くて老いた戦士感が溢れてるんですで。
一人の年老いた飛行機乗りが魔の山スタンレー山脈に挑み、一度は諦め帰ろうとすると山を荒ぶ風がまるで魔女の笑い声のように聞こえ愛機との生涯唯一の敗北の手記を乗艦デスシャドウの艦橋にただ一人、占領された地球に帰還するハーロックに重ねるという導入なんですな。
どうして片目を失ったのか、顔の傷はなぜついたのか、占領下の故郷で親友トチローとの運命的な出会い、かつての恋人との再会と離別、同じく占領された境遇の同志との出会い、ライバル的な地球占領軍司令との戦い。
そしてラストの敵増援軍を強行突破して司令戦に横付け接舷してのとどめはサイコーにカッコいいのです。
ちなみに、スーパーロボット大戦Tでアルカディア号が出た上でこのラストの戦闘シーンの攻撃が再現されたのはぶったまげました。
わが青春のアルカディアが当時、興行収益が伸びず結果として松本アニメブームの終焉となった作品となりましたが自分にとっては松本零士の映画作品としてはNo1です。
ちなみに男には刺さりますが、女性には結構引かれるかもしれません。
実際、結婚前にこれ見てて嫁にとその友人に「うわぁ・・・男って・・・」とかなり引かれました。
まるでバットマン・ダークナイトを見た後すげぇと感動してたら女性にドン引きされるアレです。
それでも自分は男の子にこそ見てほしい作品です。そのあと銀河鉄道999のトチローと哲郎を涙目で見るのがとても最高に自分にとってヲツなのであります。